「熱いストーリー」には裏がある ニッポンの「農力」を読んで

聞いてるだけで胸が熱くなる物語や演説ってありますよね。当初、ニッポンの「農力」(日本経済新聞社編)を読んだ時もそう感じました。本全体から「日本の農業は危ない!でも現場でがんばっている人がこんなにいる!」というメッセージが伝わってきますし、また「がんばれば農業は成長産業だ!」ともとれる文言が目立ちました。

が、読めば読むほど逆に気持ちが冷めました。

というのも、今は危機だ!→目指せ大逆転! というストーリーは大概危険です。

企画屋として様々な企画書(ストーリー)を手掛けてきましたが、こういうストーリーが出てくる時は

①本当は大した危機じゃないけど、企画を通すための必要性アピール

➁実は大逆転の手段はないけど、手を打たないと責任問題を追及されるからとりあえず現実味の乏しい大構想を発表

の可能性があります。ゆえに「農業はヤバイ!助けなきゃ」というストーリーが繰り返されるほど、繰り返す裏の理由が気になるのです。

実際、農林水産省が作成した自給率の引き上げが必要とする資料をみると、その匂いが強まります。

【以下の図表は現行の食料自給率の検証①農林水産業(2014年3月)より】

http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/H26/pdf/140326_03.pdf

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これだけみると、日本の自給率は低い!と思うかもしれませんが、実は同じ報告書の同じページの右に下図が載っています。

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あれ?同じ「自給率」なのに他国との比較感がだいぶ違うんですけど。。

【けいざい独談】日本の食料自給率「カロリーベース」の裏のウラ 正直、こんな指標は農業政策に無意味だ(1/5ページ) - 産経ニュース

上記の記事でも指摘されている通り、「自給率は低い!やばい!」という危機感をあおるために国際指標でも何でもない「カロリーベースの自給率」を新たに算出したようですね。

左様に企画屋は結論が上の意向に沿わない場合、もっともらしい指標や数値をひねり出すことがあります。そして、詳細な突込みを受けないよう、強い危機感をあおるストーリーをひねり出し、受け手を思考停止に追い込みます。

みなさんが読んでるだけで強い危機感を感じるような文章や記事などがあった場合は、必ず数的根拠を模索するようにして下さい。

 

 

以上、「この数字じゃ企画は通らないよ」と言われて落ち込んでいる中間管理職の戯言を終わります。

工場におけるIoT、主戦場はやっぱり中国なんだなぁ

「日米中IoT最終戦争」という本を読んで以降、IoTに凝りだした中間管理職の企画屋です。この前、IoTトレンドですよね、的な話をチームとの昼食でしたら、上司から具体的にどういう市場が考えられるのか調べてくれ、と言われて後悔しています。

昼食時の軽いノリをどうして真面目にとらえる人がこの世にいるんでしょうか。しかも普段から人柄がいいだけにむげに断れないんですよね。むう。

調査は案の定、暗礁に乗り上げていますが、わかりかけたことが一つだけあります。

「工場におけるIoT」なら主戦場はやはり「中国」です。

下図にJETROのデータから作成した製造業における一般工と中堅技術者の月額給与(ドル換算)を作りました。

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中国は世界の工場、と言われていたわけですが、一般工の給与水準は武漢まで内地に潜らない限り、他のASEAN諸国に勝てない水準にまで来ています。当然ながら内陸に行けば行くほど、人件費は安いのかもしれませんが、物流費は上昇します。

教育水準がASEAN諸国より高いので、中堅技術者(≒熟練工)の給与は抑えられているのかな、と思ったのですがそうでもないですね。いやぁ上海が突き抜けすぎているよ。。

ここから推測するのは、中国では労働者の技術が上がるほど賃金が飛躍的に伸びているのでは、ということ。当然ながらそれでは中国まで進出して工場を作った意味がない。

特に地の利はあるけど賃金は高い上海・深センのエリアを中心に自動化による労働力の省力化に需要はありそうだと、考えています。

www.nikkei.com

と思ったら、記事になってましたね。

国電子学会は17年の中国のロボット市場が62億8千万ドル(約7千億円)に達し、1年前に比べ2割超の成長を予想する。産業用ロボットは市場全体の3分の2を占め、20年まで2桁の伸びを続けるとみる。

すげぇ。後3年は2桁で伸びるんすか。2020年には約1兆円の市場じゃん。

営業計画時点で前年比横ばい(為替等特殊要因除く)が多いこのご時勢に、2桁。。。 うーん。意外に部長の山勘は正しいかも。

【感想文】スウェーデンが見えてくる と仕事の効率性を高める鍵が見えてきた

仕事改革と日本のトップが言われた影響で、労働時間の削減をうるさく言われるようになりました。が、仕事の効率性を高めることは、そもそも「言われる前からやってる」わけで、現場での努力では限界があるわけですよ。

そんな時に手に取った「スウェーデンが見えてくる(森元誠二著、新評論)」を読んで、効率性を高めるには個々人じゃなくて「組織の文化」が変わらないと無理だと思いました。ちなみにスウェーデン

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(出所:OECD

という感じで、ほぼタックスヘイブンアイルランド、金融立国のスイス、資源国のノルウェーやオーストラリアに次ぐ、高い一人当たりGDPを誇っています。日本の約2割ほど高い数字です。(ルクセンブルグという金融立国&タックスヘイブンの国は除く)

一人当たりのGDP(≒稼ぎ)がなぜ日本より大きいのか?色々ありますが、一つには

超平等社会

というのが大きいと思います。本著で印象的なのは病院のエピソードで、ある日、筆者が病院の待合室で待っていると「ローヴェンさーん」と看護師さんの呼ぶ声が。「はーい」といって立ち上がった人物はなんとローヴェン首相(当時)だったとか。ようは現役首相だからと言って全く特別扱いされないそうです。これがスウェーデンの「文化」。

そこには「肩書で人を判断しない、むしろ考慮しない」という文化が徹底されている。

これはすごいことです!皆さんも思い浮かべてください。ある日、お客さんのお偉いさんとのアポが取れました。そうなると、こちらもそれなりの面子を揃えよう。そうだ!部長と副部長のスケジュールを押さえなきゃ。その前にお客さんの情報を二人に説明して。。。といっている間に1日が終わります。

そこで「いいよ、君一人で」と向こうが軽く言ってくれたら超負担が減りますよね。

こんな文化が日本に広まったら、まじで2倍くらい生産性は簡単に上がると思います。

 

以上、部長向け資料作成に追われている中間管理職のぼやきを終わります。

IoTで保険料が全く変わるかもしれない

企画に煮詰まって(ほぼ毎日だが)街をふらついていると、気になる広告が

あるく保険 | 医療保険 | 東京海上日動あんしん生命保険

なんと!ウェアラブル端末をつけて歩数を測定し、一定数を超えると保険料が一部帰ってくる!歩数だけでは健康状態を図るには不十分なので、保険料が大きく変わることはないとは思いますが、それは今の話。

ウェアラブル端末だけでなく、例えばセイコーがあなたの就寝・起床時間をセンサーで測る時計を開発すれば、健康状態の把握はかなり進むんじゃないでしょうか。前読んだ「日米中IoT最終戦争」では何と!下着会社がつけている下着から体温・脈拍などを把握し、重要な医療情報として役立てようと試みているそうです。

身の回りの物全てから健康情報が保険会社にリアルタイムで送付されるので、保険料が「毎月」で大きく変わる日がくるかもしれません。例えば、「8月はお酒を飲みすぎましたね。月額29000円。9月は運動量が増えたので月額19000円です」みたいな請求書がくるみたいな。

そのうち、住宅ローンも健康情報と結びつくかもしれませんね。そうなると健康格差みたいな言葉が生まれてくるのかしら。。。

 

大体、アイディアに煮詰まっているときって全く関係ないトピックについてアイディアがバシバシ展開するんですよね。はい。本業に戻ります。

 

【読書感想文】徳川将軍家のブランド戦略 と会議の行き過ぎ

今いる会社では「常務会議」なるものがあり、これが入ると企画屋は大忙し。慌てて見栄えの素晴らしい過去の業績グラフや芳しくない足許の進捗状況も注釈や強調箇所を変えることにより印象を素晴らしいものにし、部の予算が削減されることを全力で防ぎに行きます。

それ以外にも「常務宛定例報告会」というのがあって、こちらは「常務会議」よりも頻度が多い一方、決まったフォーマットがあり淡々と業績を報告をする会であります。業績がさえない場合は担当課長・部長のプレゼン能力とそのための企画屋の入れ知恵で凌ぐというのが常です。

上の人に会うことは左様に面倒が臭いわけですが、「徳川将軍家のブランド戦略(安藤優一郎著、新人物文庫)」を読むと、将軍様宛の面談は面倒を超えて困難を極めていたそうです。

まずは儀礼。下がるときに襖にぶつかるのは問題外で、畳の縁に手が触れるだけでもアウト。ミスしたら会が終わった後にお目付け役から叱責大会。

四半期に一回ぐらいならいいかな、と思いきやそうもいかない。年始の挨拶、人日の節句(1月7日)、上巳の節句(3月3日)、端午の節句(5月5日)、嘉じょうの日(6月16日)、七夕の節句(7月7日)、八朔(8月1日)、重陽節句(9月9日)、玄ちょの日(10月最初の亥の日)とほぼ毎月ペース。

人によっては、毎月1日、15日に「月次(つきなみ)」と呼ばれる定例報告会に出なければいけなかったとか。

しかも呼ばれた大名がふらりと一人で行くわけでもなく、大名行列江戸城を目指す。筆者による推定規模は1万人。江戸の人口は概算で50万人だったので、都市人口の2%が大移動するわけです。今の東京なら20万人が皇居目指して歩く計算。

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出所:http://www.toukei.metro.tokyo.jp/jugoki/2002/02qdj210003.pdf

当然ながらかかる費用は莫大。そら月1回ペースで1万人移動させてたらそうなりますわな。壮大な労働力の無駄遣いであり、将軍の威光を維持するコストとしては莫大だったのでしょう。倒幕の遠因にもなったんではないでしょうか。

 

皆さんの会社でも上の人に会うための労力・コストが莫大になってませんか? それ幕府病かもしれないですよ。

 

 

 

上司や顧客にささる文章は何なのか書かせてほしい

「何が言いたいんだ!結局!」とか言われて、企画書やら営業レポートを上司から突き返された経験はありますか?私は新人~若手時代はこれの繰り返しでした(今や企画屋をやってますが)。

当時を振り返ると問題意識が絞れてない文章は押しなべて失格の烙印を押されていたような気がします。

本日は「メガトレンド(川口盛之助著)」を読んで、若手時代の古傷を思い出しました。この本は今後数十年間単位で未来予測する本を集積し、その傾向をみつけるというもの。最近、20XX年はこうなる!という本が多数出ているので、未来予測は諸説入り乱れている状況。100冊以上の本を参考に、結局は多数の人はどうみているの?を探り当てるというのが本書の目的。

だけどね、未来予測なんて諸説入り乱れて当たり前のトピックじゃないですか。しかも分野を絞っていないけど、どーするんだ?と不安に思いながら読み進めると予想通り

ただのまとめ本

になってました。あぁ若手時代の私と一緒だ。問題意識が広すぎて、収拾がつかなくなり、結論が「Aもあるし、Bもあるし、Cもありうるよ」と座布団を広げて終了。

情報量は多く、それを分別することはできても、最初の問題提起でつまずいています。

 

一方、昨日に紹介した「日米中IoT最終戦争(泉谷渉著)」はそこがばっちり。

 まず、数ある未来のシナリオの中でも「IoT」に絞る(分野限定)

そして、未来予測する対象は「日本のメーカー」に絞る(対象限定)

だから問題提起はとっても具体的「IoTというメガトレンドの中で、日本のメーカーは生き残れるのか?」。問題が明確なら結論も明確「日本のメーカーは生き残れるどころか、これを追い風に大きく飛躍する」。

 

もちろん、絞った分だけ意見は偏ります。でもいいんですよ、未来のシナリオは無数にある。それを絞り込むには、偏見という名の自分の意見で取捨選択しなければいけません。AもあるしBもあるしCでもあるし、Dというシナリオも・・・で意思決定なんてできやしませんよ。

 

という事実を気づくのに5年以上の歳月をかけてしまった冴えない中間管理職のぼやきを終わります。。

 (後、メガトレンドは要約版で、本来は各産業別に辞書のようなボリュームで未来予測をしているものでした。この形態なら納得です。)

就活生必見の書を発見!これからの勝ち組は半導体?

大学生の皆さん。とりあえず、商社、コンサル、金融業を目指せば安泰だと思っていませんか!違いますよ!その業界にいる人間から言わせていただきますと、先はどんどん暗くなってます。

 

それより半導体業界はどうですか?え?東○のゴタゴタでイメージ悪い?いやいや、あれだけでは判断してはいけません。いま、「IoT」というビッグバンが待ってるんです。それを示すのが「日米中IoT最終戦争(泉谷渉著)」。就活の時に読みたかったわぁ。久々に論理的に納得できて、かつ先行きに明るくなれる本です。あぁあの時ソ〇ーに入っていれば、人生が違ったのかしらん。。。

 

閑話休題。IoTがなぜチャンスなのか。そもそもIoTとは、家電から車からありとあらゆるものがネットで繋がるというもの。じゃあどうやってネットに繋がるか?半導体をつけるしかない。給湯器、冷蔵庫などネットとは無縁だった家電にも半導体が取り付けられます。後、物流分野にも裾野が広がる可能性がある。人手不足の中、以下に効率的な宅配網を構築するのか。それを解消するためにダンボールへ半導体をつけて管理する方法が考えられます。

 

でも韓国勢や米国、ドイツが強い?いやいや半導体であれば何でもいいわけではありません。IoT化する目的の一つに「自動化」が挙げられます。自動操縦の自動車、とかが典型例ですよね。で、人間の動作を機械にやらせる、ということは人間が持っている「感覚」を機能として持たせないとダメなわけですよね。

 

つまり、「味覚、視覚、嗅覚、触覚」を機械が代替しないと、今以上の自動化はできない。先の自動自動車の例で言うと、車自体が視覚機能を有しないと対向車や並行車と衝突してしまうわけです。じゃあ、何が必要か?

センサーでしょう。

この分野で日本は強い。Yole Developmentの調査によれば、IoT関連のセンサーの主軸を担うと言われているCMOSセンサーの33%はSONYだそうです。市場規模は2014年が93億ドル、2015年が103億ドルと前年比10%以上の伸び。同調査機関は2021年には188億ドル(約2兆円)になるとしています。SONYがシェアを維持し続けば、同社の売り上げは2021年に約3000億円増えるわけです(2015年対比)。スゲー。

http://www.yole.fr/CIS_IndustryOverview.aspx#.Wf2D92i0PIU

 それ以外にも、温度測定や様々な分野で日本のシェアが高い。また、IoTの先にあるロボット分野でも日本はドイツと並んで二強だそうです。

再びモノづくり産業が復活の狼煙を上げる一方、我が産業は。。。。

アーメン。